コロナウィルスの影響を受け、マンションの総会や理事会の開催方法について様々な議論がなされています。
さらにはコロナ後に向けて、規約や細則の改正準備も始まっています。
なかでも「テレビ会議システム」の採用については、多くの管理組合で関心が高まっているようです。
この分野では株式会社の事例が先例として多数ありますので、法令等の相違に関わらず、参考になるものを紹介させていただきます。
まず、福岡地判平成23年8月9日は、遠隔地の取締役が電話会議で取締役会に参加した事案において、次のように判示しています。
(引用元:ウエストロージャパン)
「…本件取締役会決議の有効性を検討する前提として,本件取締役会に携帯電話で参加しようとしたBが,本件取締役会に出席したといえるかどうかについて検討する。
(ア) 取締役会設置会社において,各取締役は,取締役会に出席する責務を負うところ,必ずしも物理的に取締役会が開催されている場所に出席する必要はなく,テレビ会議方式や電話会議方式による出席も可能であるものと解される(会社法施行規則101条3項1号参照)。
もっとも,取締役会は,個人的な信頼に基づき選任された取締役が相互間の協議ないし意見交換を通じて意思決定を行う会議体であるから,遠隔地にいる取締役(以下「遠隔地取締役」という。)が電話会議方式によって取締役会に適法に出席したといえるためには,少なくとも,遠隔地取締役を含む各取締役の発言が即時に他の全ての取締役に伝わるような即時性と双方向性の確保された電話会議システムを用いることによって,遠隔地取締役を含む各取締役が一同に会するのと同等に自由に協議ないし意見交換できる状態になっていることを要するものと解するのが相当である。」
*会社法施行規則101条3項1号
第101条
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
次に、経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」には、次のような記載があります。
「…ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、遠隔地等、リアル株主総会の場に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて株主総会に出席し、リアル出席株主と共に審議に参加した上、株主総会における決議にも加わるような形態が想定される。
現行の会社法の解釈においては、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を開催することも可能とされている。ただし、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが必要とされている。
また、出席型におけるバーチャル出席株主は、自らの議決権行使についてもインターネット等の手段を用いてこれを行うことが想定されるが、これは法 312 条 1 項所定の電磁的方法による議決権行使ではなく、招集通知に記載された場所で開催されている株主総会の場で議決権を行使したものと解される点には留意が必要である。」
これらの資料によれば、理事会等の会議体への「出席」と評価されるか否かの判断要素としては、情報伝達の即時性と双方向性が重視されているようです。
また、テレビ会議により会議体へ出席した場合、電磁的方法による議決権行使ではなく、開催場所で議決権を行使したものと評価されています。
なお、規約等を改正する際には、会議体そのものに関する規定のみならず、「招集手続」や「議事録」に関する規定についても、「テレビ会議システム」に対応させなければならない点に注意が必要です。
以上